アメシストの名前はギリシャ語の「アメチュストス」が語源と言われています。赤ぶどう酒の意味をもちます。紫色そのものに意味があり、古代には神聖な力を持つ宝石とされてきました。
ギリシャ神話の中では、「豊穣の神」「酒の神・ディオニス」の石、ローマ神話の中では「酒の神・バッカス」の石として語られているそうです。
バッカスに愛された妖精アメシストはダイアナの嫉妬を受け、石に変えられた。バッカスは嘆き悲しみ、石になった妖精に赤ワインを注いだ。石はまたたくまに紫色に輝く宝石に変わった。以来美しい紫の宝石をアメシストと呼ぶようになりました
というような物語。これはギリシャやローマの時代に共通するアメシストの物語になっています。
現在でも、カトリックの大本山であるローマのバチカン博物館に行くと世界中からの美術品中に、紫水晶で作られた聖杯や器、聖職者のための献上品として多く見ることができます。
紫という色は、古来、神聖な色として、洋の東西を問わず重要に考えられてきました。神々や聖職者の色として、キリスト教では司教の衣裳、仏教では高僧の衣に用いられます。日本では、朝廷が独占した時代もありました。ローマにおいても、同様だったと言われています。
紫が高貴な色であったことが、アメシストをまた高貴な宝石に高めた理由です。とくにキリスト教では、ワインがキリストの血の象徴であったことから、東洋以上に霊石としての価値を持ちました。
宝石は古代から、その色において価値を求められました。教会の宝物や、博物館に残る儀式の道具にちりばめられた多くの「カラーストーン」たち。ダイヤモンドのカットの登場で、その地位は、ダイヤモンドの輝きにとって代わられた感があります。しかし、このアメシストの物語によって、古代の人々は、宝石の色に何を求めていたかが分かります。ギリシャやローマの神話に見られる宝石物語を通じて、その頃の人々の自然の石に抱いた神秘性に思いを巡らすことができます。
アメシストは宝石の色の原点だと言えるかもしれませんね。
誕生石の中では、そんな紫の色をもつ「バイオレット・サファイヤ」もまた2月の石に数えることもできます。
筆者:吉田良(株式会社ヨシヨシ)
第5回 アメシストは紫だから価値があった
第4回 アメシストについて
第3回 ロードライトガーネット
第2回 ガーネットについて
第1回 誕生石について