3月の誕生石であるアクアマリンは、人類の歴史に長く関わってきました。この「アクアマリン」という名前は、遠く2000年前のローマ時代に名付けられたもので、その名の通りに、ピュアな海の水のような色を表す宝石です。
色の範囲は透明感のある帯青色から空青色で、その色合いこそが宝石の価値であり、愛され続ける理由です。特に青の濃い物でも、成分上、サファイヤの様なブルーにはなりません。
アクアマリンは産出量が多く結晶も大きいので、比較的安価な宝石と思われがちです。しかし、濃くて透明感のあるものは、産出量が少なく、当然高価な宝石になります。
他のどんな宝石にもいえることですが、その宝石名がついているからといって、価値があると思ってはいけません。アクアマリンとして売られているものの中には、薄い色でわずかに青みがかったものや、黄緑色がかったものもあります。
気をつけなくてはならないのは、全体に色があるように見えても、カットの厚さや深さによって、いわゆる「色が溜まる」現象です。薄い色でも厚さがあれば濃く見えますよね。上から見た美しさだけではなく、横からも斜めからも見た、「形の良さ」(見た目のバランスが良いか、不自然な形でないか)もチェックしなければなりません。これは、淡い色を持ち、透明感を楽しむ宝石の場合には、特に重要で、「良い原石に良いカット」の基本です。
アクアマリンの代表的な産地はブラジルです。現在はアフリカ産のものにも価値のある品質も多くなっていますが、古代から、世界各地にも産出します。
毎年、アメリカのアリゾナ州のツーソンにて、鉱物や化石などの展示即売会(ミネラルショー)が開催されます。
この、ツーソン・ジェム&ミネラルショー(Tucson Gem and Mineral Show)には、世界各地から、宝石関係者や鉱物好きの人が集まり賑わいます。
筆者が1998年に行ったときには、アフガニスタン産の直径15センチ高さ25センチ、重さ約4キロという、みごとな最高級のアクアマリンが展示されていましたが、価格は未定ということでした。このような博物館級の原石はウラル山脈、シベリア、マダガスカルなどでも可能性があります。
新しい鉱山のなかで、美しさで最も人気のあるものは、アフリカ、モザンビーク産の「サンタマリア・アフリカーナ」。色が濃く、透明感が強く、現在産出する最高級アクアマリンの代名詞となっています。この名前は、昔ブラジルで最高級アクアマリンが産出した「サンタマリア鉱山」にちなんで名付けられたとのこと。 モザンビーク産でなくても、この名前を冠して売られているアクアマリンもあります。
筆者:吉田良(株式会社ヨシヨシ)
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